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- チームと交わす契約の種類
- その他 契約戦略と選手契約の例外ルール
チームと交わす契約の種類
選手とチームは双方が契約条件に合意をしたら、正式に契約を結びます。契約書には選手の年俸や契約年数、さらには負傷時の規定など、さまざまな詳細な条件が含まれます。
契約は基本的に、選手がシーズン中にトレードされると、その選手の契約は新しいチームに引き継がれます。そのため、トレードが発生しても契約年数は基本的に変更されません。
たとえば、選手が3年契約の2年目でトレードされた場合、新しいチームに移籍した後も契約は残り1年となります。トレード後に新しい契約を結ぶことは可能ですが、それはチームと選手が合意に達した場合に限られます。
契約の種類をいくつか解説します。
ルーキー契約(Rookie Contract)
NBAドラフトで選ばれた選手が最初に結ぶ契約です。
ドラフト1巡目と2巡目の選手で契約の内容が大きく変わる事が多いです。
・ドラフト1巡目の選手
一巡目ドラフト選手には2年間の契約が保証され、その後2年間のチームオプションがついています。なので、基本的に1巡目で選ばれた選手は4年間の契約となるケースがほとんどです。
・ドラフト2巡目の選手
契約期間については、2巡目の選手には規定がなく、チームと選手の間の交渉によります。しかし、一般的には2-3年間の契約が結ばれることが多いです。契約の最初の1年や2年は保証されることが多いです。
ルーキー契約を交わした初年度の給与
下の表の給与はあくまでおおよその1巡目選手最大給与ですので参考までに。
通常、各チームはこの最大給与の80%以上を選手に支払うことが義務付けられています。契約によってはこれよりも少ない額を選手が受け取ることもあります。
ドラフト順位 | 初年度給与(USD) | 初年度給与(JPY) |
---|---|---|
1 | 879万ドル | 12億3072万円 |
2 | 786万ドル | 11億100万円 |
3 | 702万ドル | 9億8367万円 |
4 | 630万ドル | 8億8205万円 |
5 | 581万ドル | 8億1491万円 |
6 | 550万ドル | 7億7006万円 |
7 | 522万ドル | 7億3202万円 |
8 | 498万ドル | 6億9813万円 |
9 | 477万ドル | 6億6817万円 |
10 | 458万ドル | 6億4157万円 |
11 | 435万ドル | 6億938万円 |
12 | 413万ドル | 5億7924万円 |
13 | 394万ドル | 5億5167万円 |
14 | 376万ドル | 5億2738万円 |
15 | 361万ドル | 5億551万円 |
16 | 347万ドル | 4億8667万円 |
17 | 334万ドル | 4億6997万円 |
18 | 323万ドル | 4億5324万円 |
19 | 313万ドル | 4億3831万円 |
20 | 303万ドル | 4億2436万円 |
21 | 292万ドル | 4億0914万円 |
22 | 282万ドル | 3億9540万円 |
23 | 272万ドル | 3億8181万円 |
24 | 263万ドル | 3億6938万円 |
25 | 255万ドル | 3億5739万円 |
26 | 247万ドル | 3億4708万円 |
27 | 241万ドル | 3億3806万円 |
28 | 234万ドル | 3億2882万円 |
29 | 228万ドル | 3億2057万円 |
30 | 223万ドル | 3億1310万円 |
過去の例ですと、八村塁選手(1巡目9位)の初年度の給与は約447万ドルで、ワシントン・ウィザーズと契約されました。
以下の表は2巡目ドラフト選手のおおよその給与一覧です。
ドラフト順位 | 初年度給与(USD) | 初年度給与(JPY) |
---|---|---|
31 | 150万ドル | 2億1000万円 |
32 | 145万ドル | 2億300万円 |
33 | 140万ドル | 1億9600万円 |
34 | 135万ドル | 1億8900万円 |
35 | 130万ドル | 1億8200万円 |
… | … | … |
60 | 60万ドル | 8400万円 |
マキシマム契約(Maximum Contract)
リーグで最高の選手が結ぶ契約で、複数のマキシマム契約があるのでご紹介します。
この契約額は選手の経験年数とリーグの収益によって決まります。
下記の表は近年のマキシマム契約の給与平均値です。
[su_spoiler title=”サラリーキャップとは?” style=”fancy” icon=”chevron”]「サリーキャップ」は、各チームが選手の年間給与に支払うことができる最大額のことです。各シーズンごとに全てのチームに対して同じサラリーキャップが設定されます。この金額はNBAの全体的な収益に基づいており、年によって変動することがあります。このルールにより、資金力のあるチームだけが優秀な選手を独占することを防ぎ、リーグ全体の競争力のバランスを保つことが意図されています。ただし、一部の例外ルールにより上限を超えて選手に給与を支払うことも可能です。[/su_spoiler]
経験年数 | マキシマム契約でもらえる給与 | ドル | 円(1ドル=140円) |
---|---|---|---|
0-6年 | サラリーキャップの25% | 約3000万ドル | 約42億円 |
7-9年 | サラリーキャップの30% | 約3700万ドル | 約52億円 |
10年以上 | サラリーキャップの35% | 約4300万ドル | 約60億円 |
サラリーキャップは年々変わりますが、2022-2023年のシーズンを例にしてます。
サラリーキャップ額は1億2365万5000ドル(約173億円/1ドル=140円)。
ベテランマキシマム契約(Veteran Maximum Contract)
10年以上のNBA経験を持つ選手が受け取ることができる契約で、その選手が受け取ることができる年間給与の上限を決定します。ベテランマキシマム契約によれば、給与は前年の給与の105%またはサラリーキャップの35%のいずれか高い方で計算されます。
下記の表は少し古いですが、一部の代表的な選手の例です。
選手名 | チーム名 | 契約年度 | 契約期間 | 年間平均金額(ドル) |
---|---|---|---|---|
レブロン・ジェームズ | ロサンゼルス・レイカーズ | 2020 | 2年 | 4250万ドル |
ケビン・デュラント | ブルックリン・ネッツ | 2020 | 4年 | 4100万ドル |
クリス・ポール | フェニックス・サンズ | 2021 | 4年 | 3000万ドル |
超マキシマム契約(Supermax Contract)
正式には「指名選手契約延長」(Designated Veteran Player Extension)と呼ばれ、特定のパフォーマンス基準を満たした選手が自分のチームと結ぶことができる特別な契約です。
選手が受け取ることができる給与の上限を通常のマキシマム契約よりもさらに引き上げます。
超マキシマム契約後は初年度の給与の(サラリーキャップの35%)から始まり、毎年8%ずつ増加した給与を受け取ることができます。
たとえば、選手の初年度の給与が1000万ドルだった場合、2年目の給与は「1000万ドル + 1000万ドルの8%」となり、3年目は「1000万ドル + 1000万ドルの8% * 2」、というように計算されます。
超マキシマム契約の対象となるパフォーマンス基準には、過去3シーズンで2回以上のオールNBAチームへの選出、または直近のシーズンでのMVP又はディフェンシブプレイヤーオブザイヤーへの選出が含まれます。
選手名 | チーム名 | 契約年度 | 契約期間 | 年間平均金額(ドル) |
---|---|---|---|---|
ステフィン・カリー | ゴールデンステート・ウォリアーズ | 2017 | 5年 | 4200万ドル |
ジェームズ・ハーデン | ブルックリン・ネッツ | 2017 | 4年 | 4200万ドル |
ダミアン・リラード | ポートランド・トレイルブレイザーズ | 2019 | 4年 | 4900万ドル |
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バイアウト契約(Buyout Contract)
選手とチームが契約を終了する際に用いられます。バイアウト契約では、チームは選手に契約で定められた金額の一部を支払い、契約を解消します。
ミニマム契約(Minimum Contract)
NBAが選手との契約で設けた最低金額の契約を指します。この金額は選手のNBAでのキャリアの長さ(経験年数)によって異なります。つまり、リーグでプレイした年数が長い選手ほど、ミニマム契約の金額も高くなります。
以下にかなりざっくりとした最低賃金(年収)を載せておきます。
経験年数 | ドル(USD) | 日本円(1ドル=140円) (JPY) |
---|---|---|
0年目(新人) | $898,310 | 約1,258万円 |
1年目 | $1,445,697 | 約2,024万円 |
2年目 | $1,620,564 | 約2,271万円 |
3年目 | $1,678,854 | 約2,350万円 |
4年目 | $1,737,145 | 約2,430万円 |
5年目 | $1,882,867 | 約2,636万円 |
6年目 | $2,028,594 | 約2,842万円 |
7年目 | $2,174,318 | 約3,048万円 |
8年目 | $2,320,044 | 約3,254万円 |
9年目以上 | $2,564,753 | 約3,591万円 |
ギャランティード契約 (Guaranteed Contract)
「契約した金額は何があってももらえる」という契約です。例えば、NBAのチームとギャランティード契約を結んだとします。契約金として100万ドルを受け取ることになりました。
このギャランティード契約があるおかげで、怪我をして試合に出られなくなった、またはチームがパフォーマンスが悪いと判断してチームから外されたとしても、その100万ドルは必ずもらえます。
ノン・ギャランティード契約 (Non-Guaranteed Contract)
チームが選手を解雇した場合、その後の契約金を支払う義務がないタイプの契約を指します。これはリスクを軽減するためにしばしば使用され、選手が期待通りのパフォーマンスを発揮しなかった場合や、チームが財政的な柔軟性を必要とする場合に使われます。
2ウェイ契約(Two-Way Contract)
NBAのチームとGリーグのチームの間で、選手を行き来させるための契約。
各チームは最大で2人の選手と2ウェイ契約を結ぶことができます。
選手はNBAとGリーグの両方でプレイできるようになります。
下記の表はかなり大まかな給与(年収)ですので参考までに。
(NBAで過ごす割合) | (Gリーグで過ごす割合) | 給与(ドル) | 給与(万円) |
---|---|---|---|
0% | 100% | 3.5万ドル-5万ドル | 490-700 万円 |
25% | 75% | 10万ドル-20万ドル | 1400-2800 万円 |
50% | 50% | 30万ドル-40万ドル | 4200-5600 万円 |
75% | 25% | 50万ドル-60万ドル | 7000-8400 万円 |
100% | 0% | 80万ドル-90万ドル | 1億1200万円-1億2600万円 |
テンデイ契約(Ten-Day Contract)
NBAのチームが選手と10日間だけの契約を結ぶことを可能にする特別な契約形態です。この契約は主に、チームが一時的な選手不足を補うため、または特定の選手を試すために使用されます。
1シーズン中に選手ごとに最大2回まで結ばれます。2回のテンデイ契約を経て、チームがその選手のパフォーマンスに満足した場合、チームはシーズン終了までの契約を選手と結ぶことができます。
[su_spoiler title=”テンデイ契約の給与について詳しく見る” style=”fancy” icon=”chevron”]テンデイ契約の選手がいる間、そのチームのサラリーキャップ(チームが選手に支払うことのできる総給与の上限)には全額がカウントされます。これは、チームがテンデイ契約を使ってサラリーキャップを逃れることを防ぐための措置です。
テンデイ契約の給与は、通常、プロレート(按分)されたベテランのミニマム給与に基づいています。
その給与がNBAのベテラン(通常は10年以上のNBA経験を持つ選手)の最低給与を基準に計算され、さらに契約期間が10日間であることを反映するために割合が調整されます。
NBAのシーズンはおおよそ170~180日程度です。ベテランの最低給与を例にすると、これを全シーズンにわたって支払う場合の給与を、シーズン全体で割って日割り給与を計算します。そして、その日割り給与を10日分支払うことで、テンデイ契約の給与が決まります。ざっくりと計算した結果ですと10日の契約で約1,298万円の給与が発生します。
この方法で計算される給与は、選手が新人であってもベテランであっても同じです。[/su_spoiler]
延長契約 (Extension Contract)
選手が現在の契約が終了する前に新しい契約を結ぶことを可能にする契約形式です。
NBAの延長契約は主に以下の3つのタイプがあります。
- ルーキー延長契約:NBAドラフトで指名された後、プレイヤーとチームは初めての契約(通常4年間)を結びます。この契約の最後の年に、チームはプレイヤーと「ルーキー契約延長」を結ぶことができます。これは通常5年間で、そのプレイヤーの総収入の増加を保証します。
- ベテラン延長契約:これはルーキー契約が終了した後、または他の契約が終了する前に行われます。ベテラン契約延長は一般的に3年間で、このタイプの延長契約は現在の契約が2年以上残っているプレイヤーに対してのみ可能です。
- スーパーマックス延長契約:これは特定の条件を満たすスタープレイヤーにのみ適用されます。プレイヤーがオールNBAチーム、ディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー、または最も有望なプレーヤーに2回選ばれた場合、またはオールスターゲームのスターターに2回選ばれた場合、スーパーマックス契約を結ぶことができます。これにより、プレイヤーはそのチームの利益の35%を受け取ることができます。
エキシビット10契約(Exibit 10 contract)
チームが選手を「試用」し、その選手が本契約(ロースター)に値するかどうかを判断する契約です。
エキシビット10契約の主な特性は以下のとおりです。
- 契約変更可能:エキシビット10契約の選手は通常、プレシーズン(シーズン開始前)にチームに試験運用をするために追加されます。プレシーズンの期間中に評価され、ロースターに残るか、解雇されるか、2ウェイ契約に変更されるかが決まります。このエキシビット10契約からはほとんどの場合2ウェイ契約に移行されます。
- 保証金:エキシビット10契約は保証金を伴います。これは、選手が他チームに放出された場合でも、そのチームが選手に最大50,000ドルを支払う権利を持つことを意味します。ただし、そのためには選手がそのチームのGリーグのチームで60日間プレーする必要があります。
- 契約期間:基本的に1年間の契約ですが、契約自体が1年間持続することは少ないです。その理由は、エキシビット10契約はあくまで試験的な契約であり、主にプレシーズン(レギュラーシーズンが始まる前の準備期間)に使われます。
- 限定的な利用:各NBAチームは、エキシビット10契約を1シーズンにつき6人までのプレーヤーと結ぶことができます。
基本的にエキシビット10契約は、チームが選手に試すチャンスを与える方法です。選手がうまくいけば、フルタイムの選手としてチームに残ることができます。うまくいかなくても、選手は開発リーグでプレーし、お金をもらうことができます。
渡邊雄太 選手も過去にエキシビット10契約の経験
日本人NBA選手の「渡邊雄太」選手もこのエキシビット10契約を結んだ経験があり、2020-2021年シーズン開幕前の2020年11月26日にトロント・ラプターズのトレーニングキャンプに招待されました。12月1日にトロント・ラプターズとエキシビット10契約を結び、その後2ウェイ契約となりました。
2024年7月に日本で活躍している、横浜ビー・コルセアーズ(Bリーグ)所属の「河村勇輝」選手もこのエキシビット10契約をメンフィス・グリズリーズと契約を結ぶことになりました!今後の活躍でより良い契約を勝ち取ってもらいたいですね!
その他 契約戦略と選手契約の例外ルール
ディスエーブルド・プレーヤー・エクセプション (Disabled Player Exception)
選手が怪我でシーズンの大部分または全部を欠場することが確定した場合に、そのチームが利用できる特例の一つです。
チームは怪我をした選手の代わりに新たに選手を獲得するための追加資金を得ることができます。具体的には、「怪我をした選手の年俸の半分」と「NBAが定める一定の金額」のうち、低い方を上限とします。
例えば、怪我をした選手の年俸が2000万ドルだとすると、その半分は1000万ドルです。そして、NBAが定める一定の金額が900万ドルだとします。この場合、新たな選手に支払う給料の上限は900万ドル(これが低い方の金額)になります。
ただし、重要なのは、この特例が利用できるのは怪我によるものだけであり、他の理由(たとえば、契約上の問題やトレードによるもの)では適用できないという点です。
また、新たに獲得した選手の契約は1年間限りとなります。つまり、チームは一時的な解決策を見つけることはできますが、長期的な計画を立てるためのものではありません。
クオリファイング・オファー(Qualifying Offer)
選手の初期契約(ルーキー契約)が終了した時に、その選手を最初にドラフトしたチームが提示する一種の「先取り契約」のことを言います。
例えば、ある選手の初期契約が終わり、新たに契約を結ぶ段階になったとしましょう。その選手がすごく優れていて、他のチームもその選手を欲しがっている状況です。その選手を最初にドラフトしたチームは、その選手を手放したくないと思っています。
そこで、そのチームは「クオリファイング・オファー」を選手に提示します。これは、その選手に対して新たな契約を提示する行為のことです。このオファーを提示された選手は「制限付きフリーエージェント」となります。
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